「パッソ(初代)」&「ブーン(初代)」のデザイン採点と販売台数予想

written on 2004/6/18


さて、困りました。実は、「パッソ」と「ブーン」(以下「パッソ」のみ表記)には、かなり期待していたんです。

何せ、絶好調のトヨタ・ダイハツが送り出す、国内初の共同開発車ですよ! ストーリア星人が知名度を失い、小型車枠で苦戦を続けるダイハツにとって、「今度こそは」って気合の入ったモデルに違いないんです。

さらに、軽を出さない方針のトヨタにすれば、この「パッソ」はトヨタ流の軽自動車のあり方を示したものであって、本気で軽市場に攻め入るための重要な戦略車。これは、ヴィッツ以上のインパクトを持って出てくるに違いない、と思っていたのです。

ところがです、登場したのは、何とも面白味のないデザインの車。期待が大きかっただけに、失望も大きくなってしまいました。





いえね、落ち着いて見てみれば、パッケージもデザインも、よく考えられているんですよ。

スラントを抑えたボンネットと、ヘッドライトに一体化したポジションランプは車両感覚を掴みやすくしているだろうし、窓の下端を低い位置でほぼ水平に揃えたのもまた、運転のしやすさに繋がります。テールランプが邪魔することなく、ハッチゲートが真四角に開くあたりは、ハッチバック車として重要なポイント。

全体を眺めれば、エッジを効かせたデザインや、角張った感じのヘッドライトで今っぽさを表現。くっきりと浮かび上がるホイールアーチと、前後バンパーから飛び出したフェンダーも、流行の先端です。

そうなんです、コンパクトハッチとして、パッケージのツボをきっちりと押さえつつ、流行のデザインだって取り入れているんです。基本的には、ケチをつけるようなところなんてありません。「ヴィッツにひとつも負けていない」と言い切るのは伊達ではないんです。



ただね、「かっこよさ」だけは、明らかにヴィッツに負けています!

ギリシャ人デザイナーを起用し、コンパクトカーを、「安いから」ではなく、「好きだから」買う車に変えてしまったヴィッツには、今でもマーチと並ぶ魅力があると思うんです。「パッソ」のデザインテーマは「イカツかわいい」だそうだけど、ヴィッツだって力強さとかわいさを両立しています。それも、「パッソ」なんかより、ずっと高いレベルでです!

それに比べると、「パッソ」のデザインには、積極的に買いたくなるほどの魅力を感じられないんですよね。軽と比べれば、もっと立派で大きくて、安全性も走行性能も高いであろう小型車を、同じような値段で買えるんだから、喜ぶ人も沢山いるでしょう。

だけど、「かっこいい」とか「かわいい」からって理由で「パッソ」を買う人は、あんまり多くはないと思うのです。





それじゃあ、一体何でかっこ悪いのかと言えば、それは多分、のっぺりとしたサイドボディのせい。

「パッソ」って、一見普通のハッチバックっぽく見せてはいますが、全長との比率を考えると1,535mmという全高は相当な高さです。丸みのあるボンネットなんかで多少ごまかしてはいるけれど、横からのシルエットを見れば、軽ミニバンに近い、室内空間重視のパッケージだってことが分かります。

一方、実はヴィッツもかなりの高さがあるし、マーチの全高だって1,525mmもあります。なのに、この2車があまり高さを感じさせないのは、「パッソ」より狭いぐらいの全幅でありながら、室内幅を多少削っても、ショルダーラインを低く見せるための明確な段差をサイドボディに描いたお陰。さらには、この段差の生むボリューム感と安定感が、豊かさの演出にも効いているのです。

それに対して、「パッソ」は全幅の余裕を、デザインではなくスペースに振り分けたせいで、ボディサイドのパネルと窓が、かなり平板で直立したデザインになりました。ただでさえスペース重視のパッケージなのに、これではまるで、限られた全幅を精一杯空間に使おうとする、軽ミニバンのデザインそのもの。特に、丸みのあるフロントとリアデザインで、箱型のボディを何とか乗用車っぽく見せようとしているMAXやライフに通じるデザインなのです。

せっかく、それなりの車幅がありながら、軽ミニバンのように、デザインがスペースの犠牲にされた息苦しさを感じさせてしまう。これこそが、「パッソ」の魅力を失わせている最大の要因なのでしょう。

「パッソ」の開発にはダイハツの軽自動車で培った技術が生かされているそうだけど、デザイン手法もまた軽自動車的。やっぱり、「パッソ」はトヨタにとっての軽なんですね。





ってことで、かっこいい度は、35点

MAXのワイドボディ版みたいなデザインに魅力はないのでした。



さて、販売予想ですが、あんまり売れないような気はするんですが、そこはトヨタ。ダイハツと併せて8,500台の目標は必ず超えてくるでしょう。

僕の趣味では月6,000台ってところだけど、思い切って、トヨタ8,500台、ダイハツ1,500台の月10,000台としておきます。

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